- 食後に胃が痛む、不快感がある方へ
- 食後に起こる胃痛や不快感の主な原因とは?
- 食後の胃痛・不快感がある場合に注意が必要な病気
- 食後の激しい胃痛はアニサキス症の場合も…
- 食後の胃痛・不快感の対処法
- 病院を受診すべきタイミングは?
- 食後の胃痛・不快感がある場合の検査
- 食後の胃痛・不快感の治療方法
食後に胃が痛む、不快感がある方へ
げっぷや腹痛、胃もたれといった食後の不快な症状は、患者様からお食事の楽しみを奪います。
その原因は、食事の摂り方や内容と深く関わっています。
胃は、食べたものを消化し十二指腸へ送るという重要な役割を担っています。
通常、食べ物は胃の中で2~3時間かけて消化されますが、ケーキや揚げ物など脂質の多い食事は消化に4~5時間も要することがあります。
胃もたれなどの症状は、この消化時間の遅れが主な原因です。
また、未消化のまま十二指腸へ送られた食べ物が処理しきれず胃へ逆流し、症状を悪化させることもあります。
食後に起こる胃痛や不快感の主な原因とは?
食後に生じる胃痛は、複数の要因が複雑に関与して引き起こされます。
患者様の症状の背景には、ピロリ菌感染や血糖値の急激な変動、自律神経の乱れ、食生活の偏りなどが考えられます。
以下に、それぞれの要因について解説します。
自律神経の乱れ
患者様が日々感じるストレスやプレッシャーは、自律神経のバランスを乱す大きな要因となります。
胃腸の働きを制御する自律神経は、その影響を直接受けます。
バランスが崩れることで消化機能の低下や胃酸の過剰分泌が生じ、胃痛を引き起こします。
食生活の乱れ
ケーキや揚げ物といった脂質の多い食事、あるいは香辛料などの過剰な摂取は、胃に大きな負担をかけます。
これらの食事は消化に長い時間を要するためです。
また、深夜の食事や暴飲暴食といった不規則な食生活も、胃酸の過剰な分泌を促します。
その結果、胃粘膜が傷つけられ、患者様は胃痛を感じることになるのです。
ピロリ菌感染
胃粘膜に生息するピロリ菌は、胃痛を引き起こす主要因です。
この細菌が産生する酵素で胃粘膜が傷つけられ、患者様は胃痛を感じることになります。
さらにピロリ菌感染は、十二指腸潰瘍や胃潰瘍、慢性胃炎の原因ともなり得ます。
これらの疾患を発症すると、胃痛に加え、食欲不振やむかつき、胃もたれといった症状が伴います。
急激な血糖値の変動
食後の血糖値が急上昇した後に急降下する「血糖値スパイク」も、胃痛の要因です。
この現象は、糖分を多く含む食事を一度に摂取した際に特に起こりやすく、胃の機能に悪影響を及ぼします。
血糖値の急激な変動が、結果として不快な胃痛を引き起こすのです。
こうした症状が頻繁にみられる患者様には、「隠れ糖尿病」が潜んでいる可能性も考えられます。
食後の胃痛・不快感がある場合に注意が必要な病気
長引く食後の胃痛は、何らかの消化器疾患が潜んでいるサインかもしれません。
患者様ご自身で判断せず、当院で精密な検査をお受けいただくことが大切です。
以下に、胃痛を引き起こす代表的な疾患についてご説明します。
急性胃炎
突然発症する急性胃炎は、キリキリとした鋭い胃の痛みが特徴です。
患者様は吐き気や胸焼け、胃の膨満感や重苦しさといった症状を伴うことがあります。
主な原因は、ストレスや暴飲暴食、ウイルスや細菌による感染などです。
また、生活習慣の乱れから自律神経のバランスが崩れ、胃の機能が低下することも発症の一因です。
慢性胃炎
胃の粘膜に炎症が慢性化した状態を、慢性胃炎と呼びます。
患者様は、吐き気や食欲不振、胃もたれ、食後の腹痛、胃の不快感といった症状を自覚します。
その主な原因はピロリ菌感染であり、除菌治療によって症状の大幅な改善が期待できます。
また、この治療は胃がんやポリープ、十二指腸潰瘍や胃潰瘍といった、将来的な疾患の発症リスクを著しく低下させることにも繋がります。
逆流性食道炎
逆流性食道炎とは、胃酸が食道へ逆流し、粘膜に炎症を引き起こす疾患です。
患者様は、酸っぱいものがこみ上げる呑酸や胸焼け、胸の痛みといった症状を自覚します。
また、不眠や咳などの症状を伴うことも少なくありません。
食生活の欧米化を背景に近年患者数が増加しており、特に肥満傾向にある中年男性に多く見られます。
胃潰瘍・十二指腸潰瘍
胃潰瘍とは、強酸性の胃酸によって胃粘膜が深くえぐられてしまう疾患です。
患者様は吐き気や腹痛などを自覚し、重症化すると出血や、胃に穴が開く穿孔といった命に関わる合併症を招く危険性があります。
40代から60代の患者様に多く、治療は薬物療法が中心ですが、重症の場合は外科手術が必要となることもあります。
一方、十二指腸潰瘍は20代から40代の男性に好発し、胃潰瘍と同様の症状が特徴です。
機能性ディスペプシア
胃もたれや胃痛といった不調を訴える患者様がいるにもかかわらず、検査で異常が見当たらない状態を機能性ディスペプシアと呼びます。
かつては「気のせい」と扱われがちでしたが、現在では保険が適用される正式な疾患として確立されています。
主な原因として、胃酸に過敏に反応してしまうことや、食事を溜めるために胃が十分に拡張しないことが挙げられ、患者様のストレスも重要な要因です。
胃がん
胃がんは進行するまで自覚症状に乏しいのが特徴です。
進行すると、黒色便、食欲不振、吐き気、胃もたれ、胸焼け、胃痛といった症状が現れます。
早期発見には、定期的な胃カメラ検査が欠かせません。
胃に不調を感じる患者様は、がんの可能性も視野に入れ、お早めに当院へご相談ください。
食後の激しい胃痛はアニサキス症の場合も…
アニサキスは寄生虫の一種で、魚介類に生で寄生しています。
日本人は、新鮮な魚介類を寿司や刺身で生食する習慣があり、アニサキス症の発症は諸外国に比べて非常に多いとされています。アジやサバ、サンマ、イカ、カツオの消化管や筋肉内に幼虫として寄生しており、それをヒトが生食して発症します。
アニサキスが潜む魚介類を摂取した患者様は、数時間から数十時間後に嘔吐や吐き気、みぞおちの激しい痛みに見舞われます。
アニサキス症は、症状の程度により劇症型と緩和型に分けられ、さらに感染する部位により胃アニサキス症および腸アニサキス症に分けられます。
劇症型の胃アニサキス症では、生魚摂取から8時間以内、劇症型の腸アニサキス症では数時間から数日後に、激しい腹痛が生じます。悪心や嘔吐を伴うこともあります。
当院での主な治療は胃カメラ検査による直接摘出となりますが、数日後に患者様がかゆみや蕁麻疹といったアレルギー症状を呈することもあります。
また、まれにアニサキスが腸壁に侵入して腸閉塞を引き起こし、その際は開腹手術が必要となるケースもございます。
予防のためには、アニサキスの幼虫は、
- 酸には抵抗性で「シメサバ」のように食酢で処理しても死なないこと
- 高温では60℃以上で数秒、100℃以上では瞬時に、低温では-20℃48時間で死滅すること
の周知が重要です。
当院は急な症状にもご対応いたします
当院の胃カメラは予約制ですが、空きがあれば当日の検査も可能です。
お食事制限が必要なため、ご希望の方はお電話にてお問い合わせください。
食後の胃痛・不快感の対処法
食後の胃痛や不快感の対処方法を紹介します。
絶食する(急性胃炎)
急性胃炎を発症された患者様は、まず胃を安静に保つことが最も重要です。
発症から2〜3日間は基本的にお食事を控え、水分摂取も必要最小限に留めていただきます。
その後は、お豆腐やお粥、スープといった胃に優しく消化の良いものから再開してください。
胃への刺激を避けつつ、患者様ご自身の体調を見ながら、少しずつ普段のお食事に戻していきましょう。
病院を受診する
胸焼けや胃もたれ、胃痛といった症状が一時的ではなく、慢性的に続く患者様は当院の受診をご検討ください。
特に痛みが激しい場合は、重篤な疾患が潜んでいる可能性もあるため、専門医による診察が重要です。
また、ストレスが原因と思われる患者様には、心療内科の受診も有効な選択肢となります。
市販の薬を服用する
市販の胃腸薬は、患者様が抱える胸焼けや胃痛といった症状に対応できる選択肢です。
特にストレスが原因の場合、神経性胃炎に効果のあるタイプが有効なこともあります。
ご利用の際は、効能をよく確認し、ご自身の症状に合ったものをお選びいただくことが大切です
病院を受診すべきタイミングは?
胃の痛みを「いつもの胃もたれ」と軽視しがちですが、注意が必要です。
これから挙げる症状に心当たりのある患者様は、深刻な病気が潜んでいる可能性があります。
お早めに当院を受診されることを強くお勧めいたします。
至急病院に行くべき症状

- 嘔吐や吐血といった症状が見られる
- 立っていることすら困難なほどの激痛がある
- 体を動かすと痛みが強まる
- 冷や汗を伴うような痛みがある
できるだけ早めに行くべき症状
- 胸焼けや胃もたれといった不快な症状がある
- 下痢や便秘、発熱などを伴う
- 一度治まっても、痛みが繰り返し起こる
- 食後や空腹時など、特定のタイミングで痛む
- 胃の痛みがなかなか治まらない
食後の胃痛・不快感がある場合の検査
胃痛の正確な原因を突き止めるには、適切な検査が欠かせません。
当院ではまず、患者様から症状について詳しくお話を伺います。
その後、必要に応じて胃カメラ検査や超音波検査、血液検査などを段階的に行い、診断を確定していきます。
食後の胃痛・不快感の治療方法
当院の検査で疾患が特定された場合、その治療を開始します。
併せて、以下の方法で症状の改善を図ってまいります。
生活習慣の改善
不規則な生活習慣は胃痛の要因となるため、患者様にはその見直しをご提案します。
また、ストレスが原因の患者様には、その負担を和らげるための対処法を当院で一緒に考えてまいります。
薬物治療
当院では、患者様の症状に応じ、胃の機能改善薬や胃酸分泌抑制薬を処方します。
場合によっては、漢方薬を用いることもございます。