胃潰瘍・十二指腸潰瘍

粘膜がえぐれる胃潰瘍・十二指腸潰瘍

粘膜がえぐれる胃潰瘍・十二指腸潰瘍胃潰瘍や十二指腸潰瘍は、胃や十二指腸の内側の粘膜が深く傷ついてただれたり、えぐれたりしてしまった状態です。
わかりやすく言えば、胃や腸の内側に「傷」や「穴」ができた状態です。
どちらもみぞおちの痛みや不快感などの症状が現れる病気ですが、放置すると傷が深くなって出血したり、最悪の場合穴があいてしまう(穿孔)こともあるため注意が必要です。
現在では薬で治すことができますが、再発しやすい病気でもあります。

胃潰瘍と十二指腸潰瘍の違い

「胃潰瘍」と「十二指腸潰瘍」は、できる場所が違うだけで症状はよく似ていますが、発症しやすい年齢や痛みのタイミングに特徴があります。
胃潰瘍の好発年齢は40-60歳代の中高年層ですが、十二指腸潰瘍は10-20歳代の若年者に多く、男女比では男性に多いです。
胃潰瘍ではピロリ菌感染が70%以上、十二指腸潰瘍では90%以上認めると報告されています。

  胃潰瘍 十二指腸潰瘍
発症しやすい年代 中高年〜高齢者 若い方にも多い
痛みの出やすいタイミング 食後に痛みが出やすい 空腹時や夜間に痛みが出やすい
再発しやすさ 再発しやすい 再発しやすい(特にピロリ菌感染時)
主な原因 ピロリ菌、痛み止め ピロリ菌感染が多い

どちらも放置すると危険な病気ですが、薬で治すことができます。
みぞおちの痛みや胃の不調が続く方は、早めに胃カメラ検査で状態を確認することをおすすめします。

このような症状はございませんか?

このような症状はございませんか?胃潰瘍や十二指腸潰瘍では、以下のような症状が現れることがあります。特に、次の症状が続く場合は注意が必要です。

みぞおちの痛み・不快感

胃やお腹の真ん中あたりがしくしく痛んだり、重苦しく感じることがあります。食後や空腹時に強くなることもあります。

空腹時や夜間に腹痛

十二指腸潰瘍では、空腹時や夜間にお腹が痛くなることが多いのが特徴です。何かを食べると一時的に楽になることもあります。

胃もたれ・吐き気

胃が重い、ムカムカする、食欲が出ないといった不快な症状が続く場合もあります。

胸やけ

胃酸が逆流することで、胸のあたりが熱く感じたり、酸っぱいものがこみ上げてくることがあります。

黒い便(タール便)

潰瘍から出血している場合、便が黒くなることがあります。これは消化管内で血液が消化されたサインです。

吐血(重症の場合)

潰瘍から大量に出血すると、口から血を吐くこともあります。これは危険な状態で、早急な治療が必要です。

ストレスやピロリ菌も?胃・十二指腸潰瘍の原因

ピロリ菌感染

ピロリ菌は胃の中にすみつく細菌で、胃の粘膜を傷つけやすくします。
ピロリ菌に感染していると、胃や十二指腸の粘膜が弱くなり、潰瘍ができやすくなります。
現在、日本人の胃潰瘍・十二指腸潰瘍の多くはピロリ菌が関係していると言われています。

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痛み止め(NSAIDs)の服用

解熱鎮痛薬(NSAIDs)は、関節痛や頭痛などの治療で使われる薬ですが、胃や腸の粘膜を守る働きを弱める副作用があります。
長期間使用している方や高齢の方は、薬の影響で潰瘍ができることがあるため注意が必要です。

ストレス

強い精神的・身体的ストレスがかかると、胃酸の分泌が増えたり胃の血流が悪くなったりして、粘膜が傷つきやすくなります。
いわゆるストレス性潰瘍もこの一つです。

タバコ・アルコール

タバコは胃の血流を悪くし、粘膜の防御機能を低下させます。
また、アルコールは胃酸の分泌を増やしたり粘膜を刺激するため、潰瘍を起こすリスクが高まります。

不規則な食生活

暴飲暴食、食べ過ぎ、早食い、寝る前の飲食など、胃に負担がかかる食生活も潰瘍の原因になります。
生活習慣の見直しは潰瘍予防にとって大切です。

このように、胃潰瘍・十二指腸潰瘍はさまざまな原因が組み合わさって発症することが多いため、原因に応じた治療と生活改善が重要です。

胃・十二指腸潰瘍の検査

胃潰瘍・十二指腸潰瘍は、症状だけでは確定診断できません。
胃カメラ(上部消化管内視鏡検査)で直接胃や十二指腸の粘膜を観察し、潰瘍の有無や大きさ、出血の有無を確認することが必要です。
当院では、苦痛を抑えた経鼻内視鏡や鎮静下での検査にも対応していますので、安心して受けていただけます。
また、潰瘍が見つかった際には、ピロリ菌検査も同時に行います。ピロリ菌感染が確認された場合は、除菌治療を行うことで再発予防につながります。
出血している場合は、連携病院にご紹介いたします。

胃・十二指腸潰瘍の治療法

胃・十二指腸潰瘍の治療法胃潰瘍・十二指腸潰瘍は、薬による治療が基本です。現在では手術が必要になるケースは少なく、ほとんどの場合で薬で治すことができます。
主な治療は次の通りです。

胃酸を抑える薬

胃酸の分泌を抑えることで、潰瘍の治りを早めます。

胃粘膜を保護する薬

胃や十二指腸の粘膜を守り、修復を助ける働きがあります。

ピロリ菌除菌(陽性の場合)

ピロリ菌が原因とわかった場合は、除菌治療を行い、再発を防ぎます。

内視鏡での止血

潰瘍から出血している場合は、内視鏡を使って出血を止める処置を行います。

食事や生活習慣の改善

刺激物やアルコール、タバコを控えるなど、胃に負担をかけない生活も大切です。

胃・十二指腸潰瘍の食事

胃潰瘍や十二指腸潰瘍の治療中は、胃に負担をかけない食事がとても大切です。薬で潰瘍を治している間は、粘膜が傷つきやすくなっているため、優しい食事を心がけましょう。

胃・十二指腸潰瘍の食事で気をつけるポイント

  • 刺激の強い食べ物(唐辛子、わさび、カフェインなど)は控えましょう。
  • 脂っこいものや揚げ物は胃に負担をかけるため、避けましょう。
  • アルコールや炭酸飲料は控えるのが安心です。
  • 食べ過ぎや早食いは避け、よく噛んでゆっくり食事しましょう。
  • 食事は1日3回を規則正しく摂ることが大切です。

胃に優しいメニューの例

胃に優しいメニューの例
  • おかゆ・雑炊
  • 野菜スープ(油は控えめに)
  • 白身魚や鶏むね肉(蒸す・煮る調理がおすすめ)
  • 豆腐料理
  • 茶碗蒸し
  • プレーンヨーグルト(常温)

潰瘍が治ってきたら、少しずつ普通の食事に戻していきます。
症状の強い時期は無理せず、消化の良いメニューを中心に、胃をいたわる食事を心がけましょう。

放置するとどうなる?再発と合併症リスク

胃潰瘍や十二指腸潰瘍は、治療せず放置すると再発を繰り返しやすい病気です。
また、以下のような重い合併症を引き起こす危険があります。

胃穿孔(穴があく)

潰瘍が深く進行すると、胃や十二指腸に穴が開いてしまうことがあります。激しい腹痛が生じ、緊急手術が必要になることもあります。

大量出血

潰瘍が血管を傷つけると、大量に出血して吐血や黒い便(タール便)が出ることがあります。

狭窄

潰瘍が治る過程で胃や十二指腸に狭窄を生じることがあります。狭窄は胃の出口が多く、食後の嘔吐を認めます。

がん化の心配は少ない

潰瘍の跡が直接がんになることはほとんどありませんが、慢性的に胃の状態が悪いまま放置するのは望ましくありません。

治った後も再発予防や経過観察のため、定期的な胃カメラ検査が重要です。「治ったから終わり」ではなく、再発させないことが大切です。

よくある質問

胃潰瘍は胃がんになることがありますか?

胃潰瘍そのものが胃がんになることは基本的にありませんが、胃の粘膜が慢性的に傷んでいる場合は、将来の胃がんリスクが高まることがあります。定期的な胃カメラでのフォローが大切です。

胃潰瘍と胃がんの初期症状は似ていますか?

はい。どちらも「みぞおちの痛み」「胃の不快感」など似た症状が出ることがあります。症状だけで見分けることは難しく、胃カメラで診断する必要があります。

胃潰瘍と胃炎はどう違いますか?

胃炎は胃の粘膜が表面で炎症を起こしている状態で、比較的浅い傷です。胃潰瘍は粘膜が深く傷ついて、ただれたり穴があいている状態です。胃潰瘍の方が重い病気です。

十二指腸潰瘍の初期症状はどんなものですか?

十二指腸潰瘍では、空腹時や夜間にみぞおちが痛むのが特徴です。痛みは食べると一時的に和らぐことがあります。

胃潰瘍は胃カメラで必ずわかりますか?

はい。潰瘍は胃カメラで直接観察して診断することができます。症状がなくても胃カメラで見つかることがあります。

胃潰瘍は何度も繰り返す病気ですか?

はい。胃潰瘍・十二指腸潰瘍は再発しやすい病気です。ピロリ菌除菌や生活習慣の改善で再発リスクを減らすことができます。

胃潰瘍になりやすい人の特徴はありますか?

ピロリ菌に感染している人、痛み止めを長く飲んでいる人、喫煙者、ストレスが強い人、アルコール多飲者などは胃潰瘍になりやすい傾向があります。

潰瘍の傷は自然に治りますか?

小さな潰瘍は自然に治ることもありますが、多くの場合は胃酸を抑える薬で治療する必要があります。放置すると悪化したり再発しやすくなります。

胃潰瘍の人は胃がんの検査も必要ですか?

はい。胃潰瘍と胃がんは見た目が似ていることもあるため、胃潰瘍と診断された場合でも、胃がんが隠れていないか内視鏡でしっかり確認します。

ストレスをなくせば潰瘍は治りますか?

ストレスを減らすことは潰瘍の予防や悪化防止に役立ちますが、それだけで治るわけではありません。薬による治療と併せてストレス管理を行うことが大切です。

胃潰瘍と十二指腸潰瘍、治りやすさに違いはありますか?

十二指腸潰瘍の方が比較的治りやすいと言われていますが、どちらも薬で治療可能です。ただし、どちらも再発しやすい病気です。

胃潰瘍と診断されたら食事は何に注意すればいいですか?

脂っこい料理や辛い物、アルコールは控え、消化の良い食事を心がけましょう。ヨーグルトや豆腐、蒸し料理などが胃に優しいです。

胃潰瘍は放置するとどのくらい危険ですか?

放置すると潰瘍が深くなり、出血や胃に穴があく(穿孔)などの重症化リスクがあります。早めの治療が必要です。

痛みがなくなれば潰瘍は治ったと考えてよいですか?

いいえ。症状がなくなっても潰瘍の傷が完全に治っていないことがあります。医師の指示通り治療を継続し、胃カメラで治癒を確認することが重要です。