- ストレスや自律神経の乱れが原因?機能性ディスペプシアとは
- まずはセルフチェック!機能性ディスペプシアの症状
- 機能性ディスペプシアの検査・診断
- 機能性ディスペプシアの治し方
- 機能性ディスペプシアになって食べるのが怖い…と感じている方へ
ストレスや自律神経の乱れが原因?機能性ディスペプシアとは
機能性ディスペプシアとは、胃カメラ検査などで胃や十二指腸に明らかな異常がないにもかかわらず、胃もたれや腹痛、吐き気といった不快な症状が慢性的に続く疾患です。
かつては「神経性胃腸炎」や、いわゆる「胃が弱い」といった状態として扱われていました。
胃には、食事を蓄えるための「適応性弛緩」や、消化物を十二指腸へ送り出す「胃排出能」といった運動機能があります。
機能性ディスペプシアは、何らかの要因でこれらの運動機能や知覚機能に障害が生じることで発症すると考えられています。
日本人での有病率は20-30%といわれており、ありふれた疾患ではありますが、この疾患に対する患者さんの悩みは深刻です。
まずはセルフチェック!機能性ディスペプシアの症状

- 食事を始めてすぐに満腹になり、たくさん食べられない(早期飽満感)
- 食後の胃もたれが続く
- みぞおちが焼けるような感覚がある(心窩部灼熱感)
- みぞおち付近に痛みを感じる(心窩部痛)
胃の痛みや不快感といった症状にお悩みの患者様は、機能性ディスペプシアかもしれません。
上記のうち、一つでも当てはまる症状があればその可能性が考えられます。
機能性ディスペプシアの検査・診断
胃痛や吐き気といった機能性ディスペプシアの症状は、他の多くの消化器疾患と共通しています。
そのため、確定診断には他の病気の可能性を一つずつ否定していく除外診断が不可欠です。
当院では、胃カメラ検査で食道・胃・十二指腸の粘膜を、腹部エコー検査で他の消化器を、そして血液検査で全身状態や内分泌機能を確認します。
これらの検査によって、潰瘍やがんなどの器質的疾患、糖尿病といった全身性の病気、甲状腺機能の異常など、全ての可能性が否定されて初めて、機能性ディスペプシアと診断されます。
機能性ディスペプシアの治し方
機能性ディスペプシアの発症メカニズムは完全には解明されていませんが、精神的、肉体的な要因が複合的に関与すると考えられています。
特に、過労やストレス、患者様の食生活や日々の習慣が大きく影響します。
そのため症状の悪化を防ぎ、予防するためには、ご自身に合ったストレス解消法を見つけること、疲労を溜めないこと、食事内容や習慣を見直すことが重要です。
刺激の強い食べ物や嗜好品の過剰摂取、不規則な食事時間、早食いや暴飲暴食は避けるべきです。
生活習慣の改善で症状が緩和されない患者様や、日常生活に支障をきたす場合には、当院では薬物療法も行います。
生活習慣の改善

- 十分な睡眠時間を確保し、規則正しい生活リズムを心がけましょう。
- ウォーキングなど、定期的な運動を習慣にしてください。
- 禁煙を目指しましょう。
- 食事などを厳しく制限しすぎないことも大切です。
- 入浴やこまめな休憩を取り入れ、日々の疲労を溜めないようにしましょう。
- ご自身に合ったストレス解消法を見つけ、実践してください。
食事療法

- 食事は決まった時間に摂るようにしましょう。
- 早食いをやめ、よく噛んでください。
- 暴飲暴食は避けてください。
- 脂質の多い食事は控え、栄養バランスを意識しましょう。
- 飲酒は適量に留めてください。
- 食後すぐに運動したり、横になったりするのはやめましょう。
おすすめの食事
お食事は、以下の消化に良いものを中心にすることをおすすめします。
- 鶏のささみやむね肉、豆腐、白身魚、卵といった、低脂肪で良質なタンパク質
- 加熱調理で柔らかくした野菜
※ただし、食物繊維の摂りすぎはかえってお腹の張りを招くことがあるため、患者様ご自身の体調に合わせて量を加減することが大切です。 - うどんやお粥、パンなど、胃腸に負担の少ない炭水化物
- 白湯やハーブティー、麦茶などの温かい飲み物は、胃腸の働きを助ける効果が期待できます。
避けておきたい食事
以下の食事や習慣は症状を悪化させる可能性があるため、患者様には避けていただくようお願いしております。
- 一度に大量に食べるドカ食いや早食いは、胃に大きな負担をかけます。食事と一緒に空気を飲み込みやすくなるため、お腹の張りの原因にもなります。
- アルコールは胃粘膜を直接刺激し、症状を悪化させます。
- 飲酒は適量に留めるようお願いいたします。
- カフェインを多く含む飲み物(エナジードリンク、濃い緑茶、コーヒーなど)、炭酸飲料、酸味の強い食品、香辛料は胃を直接刺激し、胃酸の分泌を促すことがあります。
- バターや生クリームを多用した料理、脂身の多い肉や揚げ物などの高脂肪食は、消化に時間を要するため胃もたれを招きやすくなります。
薬物療法
当院では、胃の運動機能が低下している患者様には、その働きを改善するお薬を処方します。
胃酸の分泌が過剰な場合は、H2ブロッカーやプロトンポンプ阻害薬、ボノプラザンといった胃酸を抑える薬を用います。
患者様の症状や体質に応じて、漢方薬を選択することもございます。
ストレスや抑うつが強い患者様には、一時的に抗うつ薬や抗不安薬を処方する場合もあります。
なお、ピロリ菌検査で陽性となった患者様には、除菌治療も併せて行います。
長期間の観察では、一度症状が消失してもまた再発することがきわめて多いことから、長い付き合いが必要となります。
機能性ディスペプシアになって食べるのが怖い…と感じている方へ
機能性ディスペプシアの患者様は、胸の灼熱感や胃の不快感といった症状から、お食事に恐怖心を抱くことがあります。
しかし、当院で診断が確定していれば過度なご心配は不要で、お食事を摂っていただいて問題ありません。
過度の飲酒や暴飲暴食は控え、絶食はしないようにしてください。
まずは消化に良いものを少量から始め、徐々に身体を慣らしていきましょう。
どうしても恐怖心からお食事ができない場合、精神的な要因が関わっていることも考えられます。
その際は、当院の消化器内科に加え、精神科や心療内科の受診もご検討ください。