食道がん

食道がん

食道がん食道がんは、食道の粘膜にできる悪性腫瘍です。早期の段階では自覚症状がほとんどなく、知らないうちに進行していることが多い病気です。日本では毎年約2万人が食道がんと診断されています。
食道がんは、がんが食道の壁に深く入り込んでから発見されることが多く、その場合は手術や抗がん剤、放射線など大がかりな治療が必要になります。
しかし、早期の食道がんであれば、内視鏡治療だけで治せることもあります。
そのため、食道がんは「早期発見・早期治療がとても重要な病気」と言えます。

症状が発見の契機となった場合、90%近くは進行癌の状態と報告されています。早期癌の60%は検診もしくは他疾患の検査中に偶然見つかったものです。

食道がんの初期は無症状?

食道がんは初期の段階では自覚症状がほとんどありません。
症状が出る頃には、ある程度進行していることが多いため注意が必要です。
進行すると次のような症状が出てくることがあります。

食道がんの初期は無症状?
  • 食べ物が胸のあたりでつかえるような感じ(食道通過障害)
  • 胸の痛み・違和感
  • 飲み込みにくさ(嚥下困難)
  • 声のかすれ
  • 食欲がなくなる、体重が減る
  • 喉の違和感や咳が続く
  • 胸焼け、背部痛
  • 咳、血痰

このような症状がある場合は、早めに消化器内科を受診し、胃カメラ検査で詳しく調べることをおすすめします。

食道がんの原因・リスク要因

食道がんは、生活習慣が大きく関係していることが知られています。
特に、次のような方はリスクが高く注意が必要です。

食道がんの原因・リスク要因
  • 喫煙者(タバコは食道粘膜に直接ダメージを与えます)
  • お酒を多く飲む方(特にアルコールを分解しにくい体質の方)
  • 熱い飲食物を好む方(熱いお茶・スープなどは食道粘膜を傷つけます)
  • 胃酸の逆流がある方(逆流性食道炎)
  • バレット食道がある方
  • 遺伝・家族歴がある方(食道がん、咽頭がんなどの家族歴)
  • 50歳以上の男性
  • 野菜・果物の摂取不足
  • 少量のお酒で顔が赤くなる人(フラッシャー)
  • 咽頭がんの既往がある方
  • 痩せている人

特にお酒とタバコの両方を習慣的に行っている方は、食道がんの発症リスクが非常に高くなると言われています。
生活習慣の見直しや定期的な内視鏡検査が、食道がんの予防につながります。

逆流性食道炎と食道がんの見分け方

逆流性食道炎と食道がんは、どちらも胸やけや喉の違和感など似た症状が出るため、症状だけで見分けることはできません。
「逆流性食道炎だと思っていたら実は食道がんだった」というケースもあるため、長く症状が続く場合は、早めに胃カメラ検査で確認することが大切です。

逆流性食道炎の特徴

  • 胸やけや酸っぱい液体が上がってくる(呑酸)
  • 横になった時や食後に悪化しやすい
  • 薬で改善することが多い

食道がんの特徴

  • 初期は無症状
  • 進行すると飲み込みにくさ(嚥下障害)が出る
  • 食事のつかえ感、体重減少、声のかすれなど

バレット食道と食道がんの関係

バレット食道と食道がんの関係バレット食道は、逆流性食道炎によって食道の粘膜が胃の粘膜に似た組織へと変化してしまった状態です。
このバレット食道は「前がん病変」とされ、放置することで食道腺がんへ進行するリスクがあることが分かっています。
バレット食道そのものは症状がほとんどありませんが、知らないうちにがん化が進む恐れがあるため、注意が必要です。

バレット食道ついて
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がんのリスクは「範囲」で変わります

バレット食道の範囲が長い(長区域型 LSBE)と、がんになるリスクが高いとされています。
短いバレット食道(短区域型 SSBE)と、がんのリスクは比較的低いですが、ゼロではありません。

胸やけが続いている方は要注意

胸やけや酸っぱい液体がこみ上げる症状(呑酸)が何ヶ月も続いている方は、バレット食道ができている可能性があります。

バレット食道があるかどうかは胃カメラ検査でしか分かりません。バレット食道と診断された場合は、定期的な内視鏡検査を受けて経過観察し、がん化していないかをしっかり確認していくことが大切です。

食道がんの検査

食道がんは症状だけでは発見できないため、適切な検査で早期発見することが重要です。
当院では、専門的な内視鏡検査を中心に、食道がんの早期診断・進行度評価を行っています。

胃カメラ(内視鏡検査)

胃カメラ(上部消化管内視鏡検査)は、食道がんの発見に最も有効な検査です。
カメラで食道粘膜を直接観察し、小さな病変でも見逃さず診断できます。
疑わしい部分があれば、組織の一部を採取して病理検査(生検)を行い、がんかどうかを確定します。

胃カメラについて
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色素内視鏡・拡大内視鏡

必要に応じて、色素内視鏡や拡大内視鏡を用いた詳しい検査も行います。
特殊な色素を粘膜に散布したり、病変部を拡大して詳細に観察することで、より正確にがんの有無や広がりを確認できます。

CT検査・超音波内視鏡(EUS)

がんの進行度や転移の有無を調べるために、CT検査や超音波内視鏡(EUS)を行う場合もあります。
これにより、がんが食道の壁のどの深さまで入り込んでいるか、リンパ節や他の臓器に転移していないかを評価できます。

食道がんの病期別治療法

食道がんの治療法は、「がんの進行度(病期)」によって大きく異なります。
早期の段階で発見できれば内視鏡治療で完治を目指せますが、進行している場合は手術や抗がん剤治療が必要になることもあります。

早期の食道がんの場合

がんが食道の粘膜内にとどまっているごく早期であれば、内視鏡治療だけで完治できることもあります。

内視鏡的粘膜切除術(EMR)

内視鏡(胃カメラ)を使い、食道の表面のがん部分だけを切り取る治療です。比較的小さい早期がんに適しています。体への負担が少なく、入院期間も短いのが特徴です。

内視鏡的粘膜下層剥離術(ESD)

EMRよりも広い範囲のがんに対応できる内視鏡治療です。特殊な器具でがんの下の層を剥がすようにして、一塊で丁寧に切除します。より確実にがんを取り除くことができます。

どちらも、お腹を切らずに内視鏡でがん部分だけを切除できる方法です。
体への負担が少なく、入院期間も短く済むことが多いのが特徴です。

進行した食道がんの場合

がんが食道の壁の深くまで入り込んでいる場合や、リンパ節への転移がある場合は、次のような治療が必要になります。

手術(食道切除術)

食道の一部または全体を切除し、胃や腸を使って食道の代わりを作る大がかりな手術です。体力や全身状態によっては手術が難しい場合もあります。

放射線治療

体の外から放射線をあててがんを小さくする治療法です。手術が難しい場合や、他の治療と組み合わせて行うこともあります。

抗がん剤治療(化学療法)

抗がん剤を使って全身に広がっているがん細胞を攻撃する治療法です。他の治療法と一緒に行われることが多いです。

集学的治療

手術・放射線・抗がん剤治療を組み合わせて行う治療です。食道がんの進行度に応じて、最適な組み合わせを選んで治療が行われます。

よくある質問

食道がんは治りますか?

はい。早期発見できれば内視鏡治療だけで治ることもあります。進行している場合でも、手術や抗がん剤治療、放射線治療を組み合わせて治療します。

喉の違和感だけでも検査は必要ですか?

はい。初期の食道がんでも喉の違和感が続く場合があります。数週間以上症状が続くなら、念のため胃カメラ検査をおすすめします。

早期食道がんは内視鏡で治療できますか?

はい。がんが食道の粘膜内にとどまっている早期の場合は、内視鏡でがん部分だけを切除して治療することが可能です。

胸やけと食道がんは関係ありますか?

あります。胸やけの原因である逆流性食道炎やバレット食道は、食道がんのリスクを高めることが知られています。

バレット食道は必ずがんになりますか?

いいえ。必ずがんになるわけではありませんが、通常よりもがんになるリスクが高い状態です。定期的な内視鏡検査が重要です。

胃カメラで小さな食道がんも見つかりますか?

はい。専門医による精密な内視鏡検査では、早期の小さながんも発見可能です。

食道がんは再発しますか?

治療後も再発のリスクはあります。定期的な検査と医師による経過観察が大切です。

食道がんの内視鏡治療は痛みがありますか?

内視鏡治療は全身麻酔や鎮静剤を使用して行われるため、治療中の痛みはありません。治療後も大きな痛みはほとんどありません。

胃カメラ検査は苦しいですか?

当院では経鼻内視鏡や鎮静剤を使用した胃カメラに対応しており、苦痛をできるだけ抑えて検査を行っています。

食道がんは何歳ぐらいで多いですか?

50代〜70代の男性に多い病気ですが、生活習慣によっては40代からリスクが高まることもあります。

食道がんと食道腺がんは違う病気ですか?

食道がんの種類の1つが「食道腺がん」です。逆流性食道炎やバレット食道が原因になることが多いがんです。

症状がなくても胃カメラ検査を受けた方が良いですか?

はい。食道がんは初期症状がほとんどないため、40代以降でリスクのある方や胸やけが続く方は、症状がなくても定期的な胃カメラ検査をおすすめします。