大腸がん

若い人も油断できない?増加する大腸がん

若い人も油断できない?増加する大腸がん大腸がんは罹患率、死亡率ともに高く、早期の発見と治療が極めて重要な疾患です。
多くは放置された大腸ポリープのがん化によって発生し、日本人の患者様では特に直腸やS状結腸にできやすい傾向があります。
しかし、早期段階であれば内視鏡治療による完治も可能なため、自覚症状に乏しいからこそ定期的な検査が重要です。
近年、20代から30代の若い患者様の大腸がんが長期的に増加傾向にあります。男性では、肺癌に次いで2番目に死亡率の高い癌となっています。女性では、大腸癌は最も死亡率の高い癌となっています。
若年層の大腸がんには、初期症状がほとんどなくご自身で気づきにくい、便潜血検査といった健診では陽性反応が出ないことがある、進行が速い傾向があるなどの特徴があります。
ご本人様も「若いから大丈夫」と判断し、発見が遅れがちになります。
こうした背景から、当院では40歳以上の患者様はもちろん、ご年齢にかかわらず定期的な大腸カメラ検査をおすすめしております。

大腸がんの原因

大腸がんの原因大腸がんの発症は、患者様の生活習慣と深く関連していると考えられています。
中でも食事の影響は大きく、肉類に多い「動物性脂肪」は発生を促す一方、野菜に豊富な「食物繊維」は発症を抑制すると指摘されています。
食生活の欧米化による「低繊維・高脂肪」な食事傾向は、大腸がんの主要な原因の一つです。
しかし、原因は食事に限りません。
ご家族の病歴といった遺伝的要因、運動不足が招く肥満や腸の活動低下、そして喫煙による発がん物質の摂取も、発症リスクを高める複合的な要因とされています。

大腸がんかもしれない…と気づいたきっかけ

大腸がんは、下記のような症状によって気づかれることがあります。

便潜血検査

多くの患者様にとって、大腸がん発見のきっかけは健康診断などで行われる便潜血検査です。
この検査は、便に混入した血液の有無を調べるもので、腫瘍に由来するごく微量の出血も検出できます。
ただし、進行した大腸癌であってもそのうち20%は便潜血検査でひっかかりません。

腹痛

腹痛が、大腸がん発見の要因となることもございます。
特に直腸やS状結腸、下行結腸にがんができた場合、便が通過しにくくなります。
その結果、患者様は嘔吐を伴う腹痛を感じることがあります。

血便

血便も、大腸がん発見の重要なサインです。
大腸の粘膜に生じた悪性腫瘍は、栄養を得るために新生血管を形成します。
この血管は非常にもろいため、便が通過する際の摩擦で容易に出血し、血便として現れるのです。

便秘と下痢の繰り返し

大腸は、食物の残りかすから水分を吸収し、固形の便を形成する役割を担っています。
しかし、大腸がんが進行すると粘膜に慢性的な炎症が生じ、この機能が損なわれるため患者様は下痢をしやすくなります。
普段から下痢と便秘を繰り返す症状のある患者様は、お早めに当院で検査をお受けください。

貧血

貧血をきっかけに、大腸がんが判明することもございます。
がん病変からの持続的な出血により、患者様が気づかぬうちに貧血が進行するためです。

体重減少

大腸がんにより体内の脂肪成分やたんぱく質が分解され、体重が減少することがあります。
普段と変わらない生活を送る患者様で、原因不明の体重減少が3~4kgほどみられる場合は、速やかに当院へご相談ください。

腸閉塞

腫瘍の増大が原因で腸管が塞がる腸閉塞も、大腸がんの症状の一つです。
この状態になると患者様は嘔吐や腹痛などをきたし、緊急手術が必要となる場合もございます。

大腸がんに初期症状はある!?症状チェック

大腸がんに初期症状はある!?症状チェック
  • 下血や血便が見られる。
  • 腫瘍で腸管が狭くなることによる、お腹の張りや腹痛。
  • 便が細くなる、あるいは排便後もすっきりしない残便感がある。
  • 下痢と便秘を繰り返すようになった。
  • 頻繁に便意を催す、または逆に便がほとんど出ない。

大腸がんは初期の自覚症状に乏しいですが、進行するとこのようなサインが現れることがあります。
これらの症状に気づかれた患者様は、当院医師による診察が必要です。
ご心配な点がございましたら、どうぞお気軽にお問い合わせください。

進行した場合の症状

  • 体重減少
  • 腹部の張り
  • 出血による貧血
  • 腹痛
  • 便秘と下痢の繰り返し
  • 急に便が細くなる
  • 残便感
  • 血便

大腸がんの進行に伴い、患者様にはこのような症状が現れることがあります。
これらの症状は、増殖したがんによって腸管が狭くなることや、もろくなったがん組織から出血することが原因で生じます。

大腸がんの検査

大腸がん検査には以下の方法があります。

便潜血検査

便潜血検査便潜血検査は、便に潜む微量な血液の有無を調べるものです。
大腸ポリープや大腸がんの早期発見に有用ですが、陽性であっても必ずしもがんとは断定できません。
炎症や痔といった他の疾患が原因の場合がある一方、陰性でもがんの可能性を完全に否定することは不可能です。
しかし、患者様が手軽に受けられるこの検査は、早期発見の重要な手がかりとなります。
当院でも大腸がん検診として対応しておりますので、お気軽にご相談ください。

レントゲン検査

レントゲン検査(造影検査)は、肛門から造影剤と空気を注入し、大腸の粘膜の状態や形状を観察する検査です。
しかし、その精度には限界があるため、疑わしい所見が見つかった患者様には大腸カメラ検査が別途必要となります。
当院では大腸カメラ検査にも対応しており、必要に応じてご案内いたしますのでご安心ください。

大腸カメラ

大腸カメラ検査は、大腸粘膜の隅々まで直接観察する検査です。
当院では最新システムを導入し、画像処理や拡大、特殊光を用いて病変の有無や範囲を精密に確認します。
検査中に疑わしい病変が見つかれば、その場で組織を採取し、病理検査によって確定診断を行うことが可能です。
また、発見した大腸ポリープは日帰り手術で切除し、将来の大腸がん予防に繋げています。

大腸カメラについて
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大腸がんの治療

がんの進行度に応じて治療方針は異なります。
当院では早期がんの内視鏡的切除に対応しています。
進行がんや手術が必要な患者様は、連携する高度医療機関へ速やかにご紹介します。

早期大腸がんの場合

がんが粘膜層にとどまる早期大腸がんの患者様には、内視鏡による切除が適応となります。
ただし、病変の範囲が広い場合は、外科手術が必要となることもございます。

進行大腸がんの場合

固有筋層より深くがんが進行すると、リンパ節への転移や周囲のリンパ管・血管への浸潤リスクが高まります。
治療は内視鏡ではなく手術が基本となり、転移が認められる患者様には化学療法を併用することもあります。

大腸癌の5年生存率はStage0:94%、stageⅠ:90%、stageⅡ:81%、stageⅢa:71%、stageⅢb:56%、StageⅣ:13%と、ステージが進むにつれて、予後が不良になっていきます。大腸癌がある場合は、できるだけ早い段階で見つける必要があります。症状がなくても早期の大腸癌ができている可能性があるので、40歳以上の方は定期的に大腸内視鏡検査を受けましょう。

よくある質問

健康診断で便潜血検査が陽性でしたが、大腸がんになっているのでしょうか?

便潜血検査で陽性となっても、大腸がんが原因とは断定できません。
この結果は、大腸のどこかからの出血を示唆するため、確定診断には大腸内視鏡検査が不可欠です。

どんな人が大腸がんになりやすいですか?

大腸がんの発症リスクを高める要因として、以下の項目が挙げられます。

  • 加工肉や赤身肉に偏り、カルシウム、食物繊維、果物、野菜などが不足した食生活
  • 喫煙習慣や過度なアルコール摂取
  • 運動不足やそれに伴う肥満
  • クローン病や潰瘍性大腸炎の既往歴がある患者様
  • 遺伝性非ポリポーシス大腸がん(HNPCC)や家族性大腸ポリポーシス(FAP)といった特定の遺伝性疾患
  • ご家族に大腸がんの既往歴がある
  • 慢性腎臓病、メタボリックシンドローム、2型糖尿病といった合併症

これらの因子を持つ患者様は発症リスクが高まることが知られていますが、必ずしもがんを発症するわけではありません。
しかし、大腸がんは早期発見と早期治療が極めて重要です。
当院では、リスクの有無にかかわらず、全ての患者様に定期的な検診をお受けいただくことを強く推奨しております。

大腸がんになれば、お腹が痛みが出ますか?

早期の大腸がんに自覚症状はほとんどありませんが、進行すると患者様は痛みを感じるようになります。
その痛みの強さや部位は、がんの位置によって異なります。
特にがんが増大して大腸の内腔を塞ぐと、腸の内容物が通過できなくなります。
その結果、腹部の膨満感とともに、断続的で痙攣性のある激しい痛みを引き起こします。
嘔吐や吐き気を伴うことも少なくありません。

大腸がんの進行速度は早いですか?

大腸がんが進行する速さは、その病期によって大きく異なります。
一般的に、末期がんは月単位、進行がんは半年単位、早期がんは年単位で進行します。
そのため、1ヶ月という短期間では、末期がんは進行し得ますが、進行がんや早期がんではほとんど変化が見られないのが一般的です。

大腸がんは遺伝と関係あるのでしょうか?

がんは遺伝子の異常によって引き起こされる疾患です。
その多くは加齢などに伴う後天的な遺伝子変異が原因であり、通常は遺伝しません。
しかし、大腸がん全体の約5%は遺伝性腫瘍であり、親から子へと受け継がれます。
これらの患者様は、特定の遺伝子異常を持つため、様々な臓器にがんを発症しやすい傾向があります。
また、大腸がんの少なくとも4分の1は、複数の遺伝的要因が複合的に関与していると指摘されています。